3660 アイスタイル 4Q後取材 20240920【初回取材】

2024/10/04

2024/12/19

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株探 バフェット・コード

スピーカー: IR
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【沿革】

Q.今日に至るまでの事業の経緯はどのようになっているか?

A. インターネット黎明期であった1999年に創業し、インターネットを使って、生活者の声が反映されていない化粧品市場を変えることが出来ると現会長の吉松が当時考えていた。同時期に共同創業者の山田が個人で始めていたコスメ情報を発信するメルマガの返信として集まった生活者の声を見て、これをデータベースとして集約・活用して化粧品ブランドにマーケティングや販売戦略を提案するというビジネスモデルを思いついた。そこから生活者の声を集めて市場に反映させる仕組みとしてクチコミサイト「@cosme(アットコスメ)」を立ち上げ、サイトへの広告掲載サービスをスタートした。

Q.メディア、EC、店舗のトライアングル構造でビジネスを運用するに至った背景は何か?

A.当時の化粧品市場にはメーカーが売りたい・小売店が仕入れたい商品が中心に流通しており、人気の化粧品であっても店頭に並んでいない問題があった。その市場構造が理由で、クチコミで人気でも必ず売れるとは限らないという課題があり、これを解決するために@cosmeのレビュー・ランキングデータを元に品揃えを用意した売場を自ら運営するECサイトを2002年にオープンした。
しかし、化粧品業界は他の業界と比較してもEC化率が極端に低いという課題があったため、販売量を増やすことを目的として2007年に実店舗の出店を開始し、現在では日本最大の化粧品専門店チェーンにまで成長した。結果として、ユーザーの投稿・行動データを活用したメディア・EC・店舗を統合したプラットフォームを持つことにより、ユーザーの興味・関心を引き出し、購買からその後のクチコミ投稿、リピート購入といった、カスタマージャーニーを全てカバーした業界横断型のマーケティングプラットフォームを構築した。

Q.2020年頃はコロナ禍の影響により業績が大きく落ち込んだようだが、その後どのようにして業績の回復を果たしたのか?

A.2018年までは順調に業績を伸ばしていたが、2019年は海外事業の外的要因により業績が伸び悩んでいた。その後コロナが流行したことにより、国内事業はEC事業が大きく伸長したが、マーケティング支援及び店舗の売上高大きく落ち込み、2020年から3年間営業赤字が続いた。コロナが明けるにつれて、当社店舗の品揃えや店頭カウンセリングがさらに評価されるようになり、店舗業績が百貨店やドラッグストアよりも早く回復し、現在の当社の業績を牽引する規模にまで拡大してきている。また、ECサイトもメディアや店舗からの送客により引き続き順調に成長を続けており、さらには、リテール分野のプレゼンスが向上したことでメディアの価値も高まり、マーケティング支援事業も成長することができた。

【マーケティング支援事業】

Q.マーケティング支援事業の収益構造はどのようになっているのか?

A.オンラインのブランディング広告を中心とする広告ソリューションが主な収益源となっており、残りがMarketing SaaSである「ブランドオフィシャル」の販売売上となっている。

Q.御社としてマーケティング支援事業をどのような位置付けとしているのか?

A.BtoBサービスであることから、限界利益率が90%程度と非常に高い水準になっており、売上高が伸びると営業利益率も伸びやすいため、安定した収益源として位置付けている。プラットフォームにおける役割としては、オンラインの情報接点だけでなく、リテール事業で培ったユーザーの購買・行動データや、ユーザーとの接点をブランドにマーケティングソリューションとして提供する事業である。

Q.MAUは現在の約1,800万人から伸びる余地はあるのか?

A.MAUは2,000万人程度まで成長余地があると考えているが、優先課題はMAUの中にいる月1回閲覧するだけに留まるユーザーの熱量とアクション量を引き上げて、価値化することにある。そのため、ユーザーエンゲージメントとUX改善に注力しており、現在の水準でも十分に業績を底上げする余地はあると考えている。

Q.最近の化粧品の宣伝方法としてメディア、SNS、インフルエンサー等の様々な手法があるが、その中で御社の@cosmeを利用する価値はどのようなところにあるのか?

A.SNSの方がユーザー数は多いが、@cosmeには化粧品ブランドのターゲットとなる美容感度の高いユーザーが多く集まっているため、効率的なマーケティングが可能となる。そして、メディア・EC・店舗を含めて膨大なユーザー接点がオンライン・オフラインで存在するため、販売チャネルとも繋がった一気通貫したユーザーへのアプローチやエンゲージメントは、当社にしかない強みである。広告を打って終わり、商品を売って終わりではなく、継続的なコミュニケーションが可能である点に価値があると考えている。

Q.最近の化粧品業界は、サンプル品を配布して良いクチコミの投稿を促すことがあると聞くが、このような動向に対して御社で実施している対策はあるか?

A.サンプル商品の配布自体は、美容に関心が高い膨大なユーザーを抱える@cosmeにとって、ユーザーへのアプローチ方法とブランドのマーケティング手法が増えるという点ではメリットである。しかしながら、クチコミの質という面では、公正なメディアとして投稿者の立ち位置を明確にするために、弊社が受注したプロモーションあるいは他社プロモーションで提供されたサンプル使用を元にしたクチコミ投稿は「サンプル使用」と明記するように対策している。

Q.今後、マーケティング支援事業をどのように成長させていきたいと考えているか?

A.今後の成長戦略としては大きく三点考えている。
第一に、現在は年間1,000ブランドと取引しているが、市場に出ている人気のブランドは3,000ブランド程度であるため、大手ブランドだけではなく、準大手や新興中小ブランドとの取引数も増加させていくことで成長させていきたい。また、近年はSNSから@cosmeへの流入が多いため、2024年2月にトレンダーズとの資本業務提携を開始し、現在SNS領域まで支援領域を拡大させた施策を始めている。
第二に、従来からクチコミや顧客・購買データを利用したトレンド分析の需要があったが、当社では分析のためのデータ整理ができていなかったため、実施できずにいた。そこで、2025年6月期からデータを活用した新規ビジネスとして、データドリブンソリューションを開始していく予定である。
第三に、コロナ禍で再編した営業組織が近年確立しはじめたことで若手が成長し、リーチできていなかったブランドにまでアプローチできるようになったので、引き続き注力する。

Q.データドリブンソリューションの現時点の進捗はどうか?

A.2025年6月期の4Qまでにリリースできるよう開発を進めている段階である。現在はPoCとして国内大手メーカー3社から受注しており、ニーズの大きさと手応えを十分に感じているので優先的に進めている。

Q.既存領域のARPPU(=一ブランド当たりの売上)は今後も上昇の余地はあるのか?

A.データドリブンソリューションは、ブランド活動でいうと広告・プロモーションの前段にある商品開発やリサーチに向けたサービスである。つまり、既存のサービス領域である広告以外の別予算にもリーチできるため、ARPPU向上の余地は十分にある。

Q.マーケティング支援事業の4Qの売上高は前年同期比で6.0%の成長率となっているが、これはブランド数の増加が寄与しているのか?

A.その認識で合っており、これは主に中堅・新興ブランドとの取引が増えたことが業績拡大に寄与している。

Q.トレンダーズとの業務提携に関して、投資家からの反応はどうか?

A.トレンダーズは美容領域におけるSNSマーケティングを軸とした新興ブランドとのチャネルが強みであるため、新規顧客獲得と既存顧客との取引拡大が期待できる。

【リテール事業(EC・店舗)】

Q.今後、リテール事業をどのように成長させていきたいと考えているか?

A.まず店舗は、新規店舗の出店、集客力のある既存店舗の増床・改装、オペレーション改善の3点に取り組んでいくことで業績拡大を図りたいと考えている。ECは、まだ認知度が低いのでメディアや店舗からの流入や、リテールイベント「@cosme BEAUTY DAY」などを起点に新規顧客を獲得したい。そこから、オンライン・オフラインを跨いだ購買体験によりリピート客の増加・LTV向上を促し、4~5年後には前期売上高の倍にまで伸ばしたいと考えている。

Q.店舗のオペレーション改善は具体的にどのようなことを実施するのか?

A.例えば、来店客数に対する接客人員不足が理由で、レジ待ちが長時間になるような店舗が現在は存在しているため、そのような店舗における人員増強だけでなく、セルフレジ導入等の対策を準備している。これにより、強みとなるカウンセリングの時間が確保でき、体験価値の向上を通じてリピート来店を促すことで、増収が期待できると考えている。

Q.来店客数が多い店舗でのインバウンド顧客の比率はどの程度か?

A.直近4-6月において店舗全体で17%となり、旗艦店である@cosme TOKYO(原宿店)は30%台、@cosme OSAKA(大阪梅田店)が25%前後となっている。

Q.現在のリテール事業の利益率は6%程度であるが、今後どの程度向上する見込みか?

A.赤字の店舗はほぼないが、利益率が低い店舗はまだあるため、今後は収益率の良い店舗を増加させることによって店舗全体の利益率を改善させていきたいと考えている。ECはトップラインが伸びれば相対的に固定費の割合が小さくなり、利益率が伸びると見込んでいる。

Q.2025年6月期の業績予想にて、マーケティング支援事業の利益率は前期比で23.7%の増益である一方で、リテール事業は前期比で2.4%の増益と売上成長率と差がある。これは今期から商標ライセンス料をリテール事業からマーケティング支援事業に支払っている影響か?

A.その認識で合っている。

Q.2025年6月期の業績予想にて、リテール事業の売上高は前期比で16.3%の増額となる見込みとのことだが、この成長の要因は何が寄与すると考えているのか?

A.店舗においては3つの新店も予定しているが、既存店舗のオーガニック成長と改装による寄与が大きいと考えている。ECに関しては引き続きセールイベントや店舗からの送客によって新規顧客を獲得することで、店舗事業よりも高い成長率を見込んでいる。

【グローバル事業】

Q.グローバル事業の今後の見通しはどうなっているか?

A.現在は韓国ブランドの日本進出需要が非常に大きいため、利益率は改善傾向にある。よって2025年6月期では黒字化を目指してサービス拡大をしていく予定である。台湾・香港・米国は収益率も安定している。中国市場はマクロ環境が厳しいながら、新しい消費トレンドに合わせたサービス刷新を図っており、それによりセグメント全体での黒字化を今期は見込んでいる。

【連結全体・その他】

Q.御社の費用構造はどのようになっているのか?

A.費用構造としては大きく人材関連費用、物販関連費用、システム関連費用、その他費用の4つに大別される。
人材関連費用は、マーケティング支援事業の広告営業やエンジニア、リテール事業の店舗スタッフが多くを占めており、常駐している業務委託も含まれる。
物販関連費用は、リテール事業の売上高と連動する変動費であり、ECの倉庫費用・配送料や店舗家賃や決済手数料等が含まれる。
システム関連費用は、マーケティング支援事業におけるソフトウェア償却やシステム利用料が主要なものとなる。
その他費用は、本社オフィスの家賃や人材獲得費用、広告宣伝費やポイント関連費用などが大きな費用となる。

Q.2026年6月期以降の業績の見通しはどうなっているか?

A.今後も引き続き成長投資を実施していくが、来期となる2026年6月期にはマーケティング支援事業のデータドリブンソリューションが本格的に稼働するため、利益率の向上が期待できる。リテール事業は今現在も順調であり、今後も拡大の余地が大きいことから、中期事業目標である連結売上高のCAGR12~15%を達成できると見込んでいる。

Q.御社が現在課題視していることは何かあるか?

A.現在の課題は、連結営業利益率の低さにある。中長期的な成長を見据えた投資をしたことと、限界利益率の低いリテール事業の売上が伸びたことにより、現在は3.5%程度の水準にまで減少している。これを解決するため、限界利益率の高いマーケティング支援事業の業績を既存サービスはもちろん、新しいサービスであるデータドリブンソリューションで伸ばしていきたいと考えている。しかし、中長期を見据えた人材・業務システムに対する投資は不可欠なものとして投資は継続する予定である。

Q.投資家から他に聞かれる質問はあるか?

A.短期視点での話になるが、為替影響によるインバウンド需要に変化はあるか?という質問を直近では多く受ける。2024年8月時点ではインバウンド売上は前月比で減少しているが、これは為替の影響ではなく、台風や地震による影響であると考えている。そのため、9月に入ってからはインバウンドも当社店舗においては回復した。

Q.最後に話しておきたいことはあるか?

A.苦しいコロナ禍を経て、収益基盤や財務体質・組織体制がようやく整ったため、今年8月に4年ぶりとなる中期事業方針を発表した。まだ成長の余地は大きく、これまで着手できていなかった事業機会にも積極的に取り組む。売上高1,000億円、営業利益80億円という中期目標は容易ではないが、既存事業だけでも達成できると見込んでいる。化粧品業界における唯一無二のプラットフォーマーとして、これからも事業拡大に邁進していきたい。

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