6768 タムラ製作所 4Q後取材 20260630【初回取材】

2026/07/16

2026/07/16

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株探 バフェット・コード

スピーカー: IR
P/E 16.3x P/B 1.17x (取材記事公開日現在)

Q.創業から今日に至るまでの事業の経緯や沿革はどのようになっているか?

A.1924年の創業当初は「田村ラヂオ商会」としてラジオの輸入販売や修理を行っていた。そこから派生して、ラジオに直接使われるトランス部品を起点として電子部品事業を拡大するとともに、トランスの実装に用いる電子化学材料事業へ事業を拡大した。また、自社開発のマイクロホンや放送機器が全国の放送局で採用されたことを契機に、放送局向けの音声調整卓やワイヤレス機器などの情報機器事業も発展し、こうした事業展開を経て、現在の「電子部品関連事業」、「電子化学実装関連事業」、「情報機器関連事業」の3事業体制となった。
その後、民生系の領域、特に空調関係等でトランス、コイル、電子部品の売上を大きく拡大してきたが、足元では、より収益性が高く成長を見込める分野へシフトしていく経営方針のもと、民生系からより大電流のパワーエレクトロニクス市場にターゲットを移しており、再生可能エネルギー、データセンター、電鉄、送配電等に経営資源を集中している。
この選択と集中の流れの中で事業整理も進めており、創業来の音声・通信技術を背景とする情報機器関連事業(放送局向け音声調整卓等)については事業譲渡を決定し、2026年10月1日に譲渡する予定となっている。

Q.2025年3月期からの事業拠点の配置見直しや事業変革等、構造改革に踏み切った背景は何か?

A. 収益性の向上と成長分野への経営資源集中という狙いがある。欧米のパワーエレクトロニクス市場向けの事業を成長領域と位置付けて注力する中で、収益性が安定しない事業や、他事業とのシナジーが低い事業については、マネジメント資源集中の観点からも整理していく必要があると考え、事業整理を実施している。

Q.電子化学実装関連事業も昔から展開していたという認識で良いか?

A.その認識で問題ない。祖業のラジオの修理・販売において、音を良くするためにトランスへのこだわりがあったが、電子部品を接合する接合材(はんだ)も良いものにしなくてはならないと考え、自社で研究開発を始めたのが電子化学実装関連事業の成り立ちである。

Q.競合他社と比較した際のコア技術や強みはどこにあるか?

A.電子部品関連事業においては、磁性部品技術と電源技術がコア技術である。特に近年は、再生可能エネルギー、データセンター、鉄道、送配電設備などで使用される大電力・大電流向け製品に注力しており、高い信頼性や品質が求められる用途で強みを発揮している。また、電子化学実装関連事業においては、はんだやフラックスなどの接合技術に加え、リフロー装置まで含めた実装プロセス全体を提案できることが強みである。

創業者の「必ずしも大会社になるを欲せず、されどその製品は世界第一流品たらざるべからず」という理念のもと、高品質・高性能な製品の開発を継続している。さらに近年は、電子部品事業が有するパワーエレクトロニクス技術と、電子化学実装関連事業が有する材料・実装技術を融合させた次世代製品の研究開発に注力している点も特徴である。

Q.情報機器関連事業は部品や原料というより製品を扱っているという認識で良いか?

A.その認識で問題なく、創業期からラジオや通信・放送関連機器を手掛けていたことから、放送・音響分野向けのマイクロホン、音声調整卓、ワイヤレスマイクやインターカム等の「音」に関する製品事業を展開している(現在ワイヤレスマイクは放送局・音響分野向け取扱いはなく、駅用のみ)。

Q.電子部品関連事業は、製品別と市場別のどちらの切り口で事業展開しているか?

A.現在は市場別で説明することが多く、特にデータセンター向けを含むエネルギー分野の大型トランス・リアクタが大きく伸びているため、その分野を中心に説明している。

Q.電子部品関連事業の販売経路は直接販売と代理店経由のどちらが多いか?

A.メーカーへの直接販売が多い。

Q.電子部品関連事業において、売上を伸ばしていく成長ドライバーはどのように考えているか?

A.製品によって異なり、大型トランス・リアクタについては、現在北米のAIデータセンター向けで大きく伸ばしており、取引のある既存顧客内でのシェア拡大や、新規顧客への展開を進めている。
一方、産業機械向けや家電・住宅向けのトランス・コイル・リアクタについては、特定顧客への大規模展開というよりは、様々な機種で当社製品を利用してもらうことで売上拡大に繋げている。

Q.北米のデータセンター向け製品が伸びている要因は何か?技術力(高周波や大容量対応等)が評価されているのか、それとも価格競争力によるものか?

A. 欧州の再生エネルギー市場で培った信頼に加え、技術力と価格競争力の両方が評価されている。価格競争力については、米国やカナダの競合と比較して、メキシコ工場で生産していることによる相対的なコストメリットが評価されている。技術面では、米国・欧州・日本の3つの地域での設計が可能であり、顧客の要求仕様に対する設計スピードの速さも採用の要因となっている。
なお、現在は技術力を活かした製品ラインナップの拡充として、Medium Voltage(中圧)領域に強みをもつ欧州企業と業務提携して技術力・設計力を強化し、データセンター向けを中心に新製品を追加していく。

Q.大型トランス・リアクタの主な競合はどのような企業か?

A.当社の主戦場が米国であるため、米国系やカナダ系の中堅トランスメーカーが主な競合となる。また、重電メーカーが内製しているケースも多く存在する。

Q.米国のデータセンター市場(PDU向け等)におけるシェアはどの程度か?

A.当社調べでは、北米データセンター向けPDU(Power Distribution Unit:電源分配ユニット)用大型トランスにおいては、40%程度の高いシェアを持っている。

Q.高いシェアを獲得できている要因は何か?

A.技術力のみでの差別化は難しい市場であり、当社が欧州でビジネスをしていた時から、欧州系の重電メーカーに再生可能エネルギー市場で当社製品を多く採用されていたことで培った信頼関係と、欧州で求められる品質基準に対応した製品を、メキシコ工場から北米市場へ供給できる点が評価されていることが要因である。現在はその欧州系の顧客が米国のデータセンター案件で大きくシェアを獲得しており、それに伴い当社のシェアも伸びている。
なお、データセンター案件は顧客の要求仕様が高まる中、開発の初期段階から共同で設計開発を行う関係性が求められており、それが高い参入障壁になっている。

Q.エネルギー分野、特にAIデータセンター向けの大型トランス・リアクタの今後の成長見通しはどのようになっているか?

A.メキシコ工場の生産キャパシティとして、2027年度に2025年度比で200%(2023年度比では400%)、2030年度にかけては2025年度比で年平均20%の成長を見込んでいる。
なお、確定した受注だけでなく、先々の開発案件も先行して獲得しており、メキシコ工場能増分の立ち上がりに時間はかからないと考えている。

Q.大型トランス・リアクタが増加することで収益性はどのように変化するか?

A. 大型トランス・リアクタは電子部品の中でも収益性が高く、特に2027年3月期下期から投入予定のMedium Voltage領域の製品は現在供給している製品よりもさらに収益性が高いため、今後の拡大により営業利益率はさらに改善していくと想定している。

Q.電子部品関連事業における営業利益率の目標はあるか?

A.全社として中期経営計画の最終年度に営業利益率7%以上の達成を目指しており、電子部品関連事業としては具体的な数値は非公表ではあるが、現在よりも一段高い営業利益率が必要になると認識している。

Q.産業機械向け、交通車両向け、家電・住宅向けは生産拠点が異なるという認識で良いか?

A.その認識で問題ない。
交通車両向けは製品が特殊であるため工場が異なるが、産業機械向けや家電・住宅向けは工場に大きな差はない。

Q.エネルギー分野以外の産業機械向け、交通車両向け、家電・住宅向けは、2027年3月期に向けて成長はフラットという見通しで良いか?

A.交通車両向けを除き、その認識で問題ない。産業機械向けや家電・住宅向けは、パワーエレクトロニクス市場と比較して技術的要件が異なり、中国系の安価なメーカーも多数参入している。そのため、製品のコモディティ化が進んでおり大きく収益が取りづらく、今後大きく伸ばしていく市場ではないと考えており、安定的な推移を見込んでいる。
一方、交通車両向けも大きな売上の伸びは見込んでいないが、来年度から本格化する新モデルは現在の製品よりも付加価値が高いため、収益性は改善すると見込んでいる。

Q.航空宇宙・防衛産業向けについてはどのように考えているか?

A.航空宇宙・防衛産業向けは、売上ボリュームが大きくないが、高い技術力が求められるため収益性が高く、昨今の防衛関係の需要増加による売上拡大で、収益面の貢献が期待できる分野である。

Q.航空宇宙・防衛産業向けの売上が2030年に1.5倍になっても、全体に占める割合は小さいという認識で良いか?

A.その認識で問題ない。市場別では産業機械に含まれるが、産業機械全体の1割に満たない程度であるため、1.5倍になっても全体の売上を大きく押し上げるものではない。

Q.中東情勢等による原材料価格の高騰は利益率に影響しているか?

A.サプライヤーからの価格改定の要請はあるが、現時点において、公表すべきような重要な影響は認識していない。
一方で、物流ルートや原材料価格への波及リスクは継続的に注視しており、調達先の分散・継続的な価格改定などの対策を進める。

Q.2027年3月期の通期業績予想において、体質改善費用を500百万円見込んでいるが、この費用はどのような使途となっているか?

A.主に中国での生産拠点の再編費用であり、中国の生産拠点を最大3割削減する計画のうち、すでに半分以上が完了し、残りの完遂に向けた費用が含まれている。
なお、拠点整理の対象は全セグメントである

Q.中国の拠点整理の背景は何か?

A.特に電子部品において中国に生産拠点が集中していたことと、中国国内で中国メーカーが台頭し競争環境が激化しているためである。
また、国際情勢によって、当社が注力する米国向けにおいて、中国から製品を輸出することが難しくなっていることも要因である。
ただし、中国市場から完全撤退するわけではなく、中国国内の顧客や、米国以外の欧州、アセアン向けには引き続き供給を行っていく。

Q.電子化学実装関連事業において、ソルダーペーストとソルダーレジストの販売先はどのような企業か?

A. 日系、中国系、台湾系基板メーカーが中心であり、グローバルに満遍なく展開している。

Q. ソルダーペーストとソルダーレジストの競争環境はどのようになっているか?

A.ソルダーペーストとソルダーレジストで立ち位置は大きく異なる。
ソルダーペーストは、当社と同規模でグローバルに供給できる企業が他に2社(米国系のMacDermid Alpha、日系の千住金属工業)あり、この3社で市場の50%程度のシェアを占めている。
一方、ソルダーレジストは、太陽ホールディングスが圧倒的なシェアを持っており、当社の全体シェアは大きくない。
しかし、当社はスマートフォン向けの黒色フレキシブル基板用ソルダーレジストといったニッチな市場に強みを持っており、その分野での売上を伸ばしている。

Q.AIサーバー向けの基板需要が増加している間は、ソルダーペーストやソルダーレジストの需要も強いという認識で良いか?

A.その認識で問題なく、これらの製品は基板実装に使用される材料であるため、基板の需要が増加すれば、中長期的に需要拡大が期待できる。

Q.素材価格の上昇に連動して売上が上がっているが、需給の逼迫により素材価格上昇分以上の価格転嫁は可能か?

A. ソルダーペーストについては、主要原材料である金属価格に連動した価格設定で価格上昇が大きく、素材価格分以上の価格転嫁を行うことは難しいと考えている。収益性改善に向けては、高機能材料など付加価値の高い新製品の投入・拡販が重要であると認識している。

Q.ソルダーペーストやソルダーレジストの生産キャパシティ上の制約はあるか?

A.化学材料の生産キャパシティはまだフルではないため、需要拡大に対しては対応可能と考える。現在AIサーバーに入っているPICC(感光性カバーレイ)は、ウェアラブル端末や車載用のSDV(Software Defined Vehicle)向けにも拡販活動を進めており、これらの市場が拡大すれば、成長が期待できる分野である。

Q.ソルダーペーストにおける競合他社との価格競争はあるか?

A.当社のソルダーペーストは、車載向けの基板や通信関連(データセンター、通信基地局等向け)が中心となっており、これらの領域は前述の上位3社が主要プレーヤーとなっている。
一方、汎用的な市場においては、中華系を含む様々なメーカーがおり、厳しい価格競争が存在する。
そのため、当社は汎用品での単純な価格競争を避け、高耐熱や高信頼性といった機能と品質の優れた高付加価値な製品をグローバルな供給体制で伸ばしていく戦略を取っている。

Q. 2027年3月期の電子化学実装関連事業の営業利益率の予想について、1Qと2Q以降で大きな差があるが、この変動の要因は何か?

A.素材価格、特にスズと銀の価格高騰による影響である。主要顧客とは3ヶ月ごとに価格改定の取り決めがあり、2026年3月期4Qの素材価格高騰の影響を受けた2027年3月期1Qの営業利益率は悪化するが、2Qの価格転嫁で回収され、3Q以降は素材価格がフラットに戻って、利益率が安定していくという予想となっている。
中長期的には二桁の営業利益率を安定的に確保できる事業であると考えている。

Q.足元の4月、5月の受注が好調だが、計画比でも需要は強いという認識で良いか?

A.その認識で問題ない。特に産業機械向けやスマートフォン向けは計画段階で保守的に見ていたこともあり、想定以上に堅調な受注が続いている。
なお、データセンター向けも、ある程度想定内であるが引き続き強い需要がある。

Q.受注から売上計上までのリードタイムはどの程度か?

A.電子部品関連事業が2ヶ月から3ヶ月程度、電子化学実装関連事業が1ヶ月から2ヶ月程度である。

Q.2027年3月期の通期計画の達成に向けて、懸念事項や下振れリスクはあるか?

A.情報機器関連事業において、想定よりも放送業界の需要が少なく、上期の業績に下振れのリスクがあると見ている。
ただし、情報機器関連事業は年度末等の設備投資に売上が集中して利益が出る構造のため、2027年3月期に限っては1Q単体での利益貢献は元々限定的である。
なお当該事業は2026年10月に譲渡予定である。

Q.投資家からのよくある質問や、伝えておきたいことはあるか?

A.株主還元の方針についてよく質問を受けるが、当社としては、前年度を下回らない安定配当を維持しつつ、体質改善後はDOE3%を目途とする方針であると回答している。なお、当社は現在進行中の中期経営計画最終年度で営業利益率7%以上、ROE8以上との目標を設定している。事業ポートフォリオ変革でその数字に持って行き、事業ポートフォリオ変革後の2030年度には営業利益率10%以上、ROE12%以上を目標としている。

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