4047 関東電化工業 2Q後取材 20231204 【初回取材】

2023/12/29

2023/12/27

KS

さん

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株探 バフェット・コード

スピーカー: IR
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Q.御社の事業の成り立ちはどのような経緯か?

A.弊社は古河グループに属しており、群馬県渋川市の近くにある利根川水系の関東水力を電力として活用した、航空機に使用される金属マグネシウムの製造を祖業としている。終戦後、金属マグネシウムの需要がなくなり、電力が余剰となったため、苛性ソーダの増産を開始した。
その後、塩化鉄や酸化鉄の研究を行い、鉄系事業を開始し、当時需要があったオーディオ用メタルテープの原材料MAPを製造していた。

Q.フッ素ガスの製造はどのような経緯で開始したのか?

A.弊社に、フッ素に注目して研究のために渡米した研究者がいたことがきっかけである。当時は高圧電気設備に絶縁体用ガスとして用いられるSF6を主に製造していた。当初、フッ素ガスが半導体に使用されることは想定していなかったが、SF6やCF4の半導体需要が増えてからは、半導体製造用特殊ガスの製造に事業を展開していった。

Q.電池材料の製造はどのような経緯で開始したのか?

A.電池メーカーよりLiPF6の製法について問い合わせがあり、研究を開始した。研究開発の結果、LiPF6を合成する新しい製法を確立し、電池材料事業に展開した。

Q.電池材料として販売している主要製品はLiPF6か?

A.その他の電解質も販売しているが、主要製品はLiPF6である。

Q.売上・利益の割合が小さい基礎化学品事業や鉄系・商事・設備事業部門は、御社の中でどのような位置付けなのか?

A.精密化学品事業が売上の約8割を占めており精密化学品事業が中心の会社となる。
しかし、基礎化学品事業で製造している塩素を精密化学品事業の原材料として使用している。大量の塩素を安定的に調達するのは難しいので、基礎化学品事業は原材料供給部門として継続しなくければならない。

Q.精密化学品事業のうち、半導体用特殊ガスと電池材料の売上構成比はどの程度か?

A.電池材料におけるLiPF6の売上構成が非常に大きく、弊社の製造能力に基づいて販売単価が推測される恐れがあるため、開示していない。

Q.精密化学品事業の製品ごとの売上の内訳は?

A.製品ごとの売上は個別には開示していないが、特殊ガスの市場規模はNF3が最も大きい。
NF3は半導体やフラットパネルディスプレイの製造過程で用いられる特殊ガスであり、3D-NANDやDRAMなどのメモリ半導体、ロジック半導体など幅広く使用されるガスである。弊社もかつては、NF3で大きなシェアを持っていた。

Q.御社がNF3のシェアを落とした理由は何か?

A. NF3より付加価値が高く、今後の需要拡大が見込まれるフッ素ガスに注力しているからである。
弊社はフッ素を電気分解して高純度のフッ素を製造する独自技術があり、製造したフッ素を様々な化合物と反応させて高純度な特殊ガスを製造している。競合他社は3~4種類の特殊ガスしか製造していないが、弊社は15種類程度を製造しているという強みがある。
この中でも、3D-NANDの製造に使用し、表面を深く掘ることができる特徴を持つ、C4F6やCOS等の高付加価値製品に注力している。
また、NF3はフラットパネルディスプレイ向けの販売は少なく、より高い品質が求められる半導体向けに主に販売している。

Q.WF6はどのように使用される特殊ガスか?

A.半導体前工程で使用される配線材料ガスである。露光して表面を削った後にWF6を使用すると表面に保護膜を生じ、配線を残すことができる。

Q.半導体製造工程で使用される特殊ガスの用途は何によって異なるのか?

A.半導体エッチング、半導体製造装置クリーニング、配線材料、FPDクリーニング等、幅広い用途に使われており、目的に合わせて複数のガスを混ぜて使用している。

Q.利益貢献が大きいのは、C4F6等の高付加価値製品という理解で合っているか?

A.個別の利益率は開示していないが、C4F6やCOSは競合他社が比較的少ないため、注力している。

Q.半導体用特殊ガスは、メモリ半導体メーカーやロジック半導体のファウンドリーに直接販売しているのか?あるいはガスディーラーに卸しているのか?

A.直接販売している場合と、ガスディーラーに販売している両方の場合がある。

Q.電池材料は電池メーカーに直接販売しているのか?あるいはディーラーに卸しているのか?

A.電池メーカーに販売しているのではなく、電解液メーカーに直接販売している。例えば、前期は三菱ケミカルが主要な販売先であった。

Q.精密化学品事業の販売価格は都度交渉だという理解で合っているか?

A.その認識で問題ない。全ての製品で都度交渉をしている。

Q.精密化学品事業の販売価格は、競合や市場の状況によって大きく変動するのか?

A.半導体市場が成長し続けてきているため、特殊ガスの需給がタイトな局面がある半導体メーカーは安定的に調達しないといけないので、他社が大量生産を行い、シェア拡大のための積極的な値下げをしない限り販売価格は維持できる。

一方でLiPF6は、リチウム価格が原材料価格に占める割合が大きく、リチウム価格の変動の影響を受けやすい。

Q.特殊ガスの市況をどう捉えているか?

A.DRAMや自動車向け半導体の市況は底打ちしているが、当社の販売割合が多いメモリ半導体の市況は調整が続いている。

Q.御社の特殊ガスが使用される3D-NANDは、どのアプリケーション向けの需要が大きいのか?

A.PC、スマホ、データセンター、AIなど多岐に渡っている。3D-NANDを製造している半導体メーカーの稼働率が低くメモリメーカーの回復を待ち望んでいる。

Q.御社の業績は、半導体メーカーの工場稼働率と同時に回復していくのか?

A.その認識で問題ない。ウェハの投入枚数と積層数に比例して使用数量は増加するとみている。

Q.御社の電池材料のシェアはどの程度か?

A.LiPF6のシェアは、日本の車載市場において7割、アメリカにおいて4割、ヨーロッパにおいて1割であり、高品位の車載向け電池でシェアが高い。
電解液メーカーに販売しているので、販売先の電解液メーカーが電池メーカーに採用されるかという問題もある。

Q.電池市況をどのように捉えているか?

A.EV市場の成長率が期待されていた予想成長率よりも鈍化している。
また、中国メーカーが補助金を受給し、期待されていた成長率の能力を既に有している。需要を無視した生産が行われた結果、販売価格が低下し苦戦している。

一方、中国以外でLiPF6を生産しているメーカーは弊社と韓国メーカーの2社のみであり、IRA法による引合を受けている状況である。

Q.精密化学品事業で製造している製品の消費期限はどの程度か?

A.消費期限は半年~1年と長くない。また、製造した特殊ガスはボンベに入っているので、在庫として保存するためには場所が必要になる。

Q.現在は電解液メーカーにおいて電池材料の在庫が貯まっているという理解で合っているか?

A.電池メーカー、電解液メーカー、電解質メーカーの全てで在庫が貯まっていると見ている。

Q.精密化学品事業において、御社と同程度の品質の製品を製造している競合他社はいるか?

A.フッ素は非常に危険な物質であり、扱えるプレイヤー自体が少ない。また、弊社は老舗のメーカーであり、複数のフッ素ガスを製造しているので、コンペの時は必ず顧客から声がかかるポジションにいる。

Q.ステラケミファは御社の競合なのか?

A.一部の電池材料で競合している。半導体用材料については、弊社は主にエッチング、クリーニングのガスを販売しているが、ステラケミファはウェハ洗浄などのための液を販売しているので、競合ではない。

Q.御社の中長期戦略の骨子はどのような内容か?

A.半導体も電池も間違いなく成長する領域なので、市場の成長に付いていく計画である。また、資本コストの把握や資本効率の向上が求められており、持続的に成長する体制の構築と企業価値の向上を骨子としている。

Q.半導体市況はいつ頃の回復を見込んでいるか?

A.半導体市況は来年4月ごろに回復し始め、9月ごろには本格的に回復していると想定している。

Q.電池市況はいつ頃の回復を見込んでいるか?

A.電池市況は本格回復が2025年になると考えている。2024年は中国メーカーの採算を無視した販売がある程度収まるとみている。また、IRA法により、中国以外で製造している当社への引合を受けて交渉を行っており、2024年の予想数値に織り込んでいる。

Q.御社と韓国メーカーの品質は同程度なのか?

A.その認識で問題ない。

Q.韓国メーカーが補助金をもらうことで価格競争が激しくなるリスクはあるか?

A.韓国メーカーはそのようなリスクはないと考えている。一方で、中国メーカーは既に補助金を受領して過大な能力で製造している。
中国メーカーがプライスリーダーになっており、需給が締まると価格が3~4倍程度まで上昇することが過去にあった。電池材料は価格変動が激しい。

Q.IRA法の追い風をどのように活かして成長する方針か?

A.今後10倍程度に成長が期待されている市場に付いていくのは弊社の規模を考えるとリスクが高いと判断し、海外メーカーと電池材料のライセンスビジネスの拡大に取り組んでいく。メキシケム社とアメリカで技術提携を実施しており、上期には工場建設のロイヤリティの一部計上した。その他の地域でも複数社の引合がある。

Q.御社と提携先企業の製造量はどの程度の比率になるのか?

A.弊社が現在8,000トンの設備増強を計画しているのに対して、提携先のメキシケムは2025年中に10,000トンの製造能力を見込んでいる。将来的にアメリカにおける需要はメキシケムの製造能力を大きく上回ると考えている。

Q.今期の下方修正は、電池材料で発生した棚卸資産評価損が要因であるという理解で合っているか?

A.棚卸資産評価損もあったが、電池材料の販売減が大きい。

Q.足元の電池材料製品の原材料価格や販売価格はどうか?

A.販売価格は下落しており採算が厳しい。そのため、採算が合わない販売先について、下期は販売を見合わせるという判断をした。これが、大きく下方修正した要因である。現在は製造ラインの改善などのコスト削減に取り組んでいる。リチウム価格は現在も低下しているが、生産調整に伴い購入数量を抑制しているため、下期には評価損が発生しない見通しである。

Q.2024年稼働予定のC4F6の工場と2025年稼働予定のCOSの工場は、当初の計画通りに稼働予定なのか?

A.当初の計画対比で半年程度後ろ倒しとなっている。当初計画通りに稼働させても需要が追い付いていないため、半導体の生産が回復すると見込まれる時期へ稼働を延期させた。

Q.2024年稼働予定の工場は、具体的にいつ頃から稼働するのか?

A.半導体市況が来年の中頃に回復すると見込んでいるので、特殊ガスの増強設備はそのタイミングに合わせて稼働を想定している。

LiPF6は2025年に本格的に需要が回復すると考えているが、2025年の販売数量によっては2024年から在庫を貯める必要が生じるので、2024年後半の稼働を予定している。

Q.工場は稼働後すぐにフル稼働となるのか?

A.当初期待されていた市場の成長率まで回復すれば、すぐに工場のキャパシティは埋まると想定している。

Q.新規エッチングガス(KSG-14)はどのようなガスか?

A.顧客と共同開発した特殊ガスであり、環境負荷が低く、薄膜の狙った位置を深掘りできる特性がある。

Q.新規エッチングガス(KSG-14)の需要はどうか?

A. 販売を想定していた顧客からの評価が遅れているため、量産設備の稼働を後ろ倒しとした。

Q.半導体メーカーから特殊ガスの環境負荷を軽減するように要求されることはあるか?

A.フッ素ガスの多くはフロンガスであり、環境負荷が高く、代替ガスが望まれている。しかし、半導体製造工程全体の排出量うち、フッ素ガスが占める金額は小さいため、リスクを冒してまで既存の製造ラインを変更することは想定しにくい。
一方で、新規の製造ラインで新しいガスを使用する需要はあり、新規エッチングガスもそうした需要を捉え顧客と共同で開発した。

Q.中期経営計画はどのように変更したのか?

A.最終年度を2年延期し、2025年3月期に70億円、2026年3月期に80億円、2027年度3月期に150億円の営業利益を目標としている。

Q.2025年の売上の成長率に対して増益幅が小さいのはなぜか?

A.2024年の中頃より半導体メーカーの稼働が回復と想定しており、設備増強の減価償却が開始される計画である。2024年は中旬より増強設備が稼働となるため、償却費負担が半年程度である。2025年は通年で償却負担となるため、償却費が増加となり増益幅が小さくなっている。2026年は償却負担が減少となる。
2025年の減価償却費が最大であり、それ以降は減少すると想定しているので、2026年は大幅に営業増益を見込んでいる。

Q.減価償却費の計上方法は?

A.設備の主となる精密化学事業の機械装置は定率6年となる。

Q.中期経営計画における半導体材料と電池材料の投資額420億円は何に充当されるのか?

A.420億円のうち、成長投資と維持投資の割合は2:1である。

Q.11月に開示された中期経営計画で特に重要な点はどこか?

A.PBRが1倍を割れていることを経営陣は真摯に受け止めており、株主に寄り添った中期経営計画を策定した。配当性向を20%から30%以上へ変更、政策保有株の縮減などを計画している。今年度の配当金は赤字予想ではあるが14円を計画している。

Q.配当性向はいつから引き上げるのか?

A.来期から30%以上とする計画である。

Q.2Q決算後の取材では投資家からどのような意見があるか?

A.2013年3月期以来の赤字なので、長期目線の投資家は半導体市況が回復すれば弊社の業績も回復すると考えているようである。
一方で、短期目線の投資家からは、電池材料が不調な中、来期計画が楽観的なのではないかという意見がある。

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